日本妙好人協会

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金言金行集
2021年7月7日
 「 この三州には坊主も澤山(たくさん)御座る

(ござる)が、他力を知つて居る坊主は一人か

二人かと云ひたいが、とても一匹も居(を)りやせ

まい 」 と云ひ はなされた。

 其(その)一言が其寺の院主の胸にムツトくすが

り、説教の終るを待つて座敷へ飛込み、

 「 なんぼ御使僧(ごしそう)でも、今日のやうな

ことを云はれては他から差止(さしとめ)る。私は

差止はせぬが、兎も角あのやうなことは云わぬが

よからう、他力を知つた者は一匹も居(を)りやせ

まひとは、餘(あま)り非道(ひど)いぢやないか 」

と、目玉を三角にして怒られた。

 佛照寺(ぶっしょうじ)はそれを聞くなり、物をも

云はず直(ただち)に座を立ち院主の下座へ

さがり、恭(うやうや)しく兩手(りょうて)をつき、

「 甚(はなは)だ失禮(しつれい)を致しました

どうぞお許し下さへませ、私は今日まで他力を

知つて御座(ござ)る御方(おかた)は、十方法界

(じっぽうほうかい)尋ねても、大悲の御親

(みおや)御一人(ごいちにん)ぢやと心得て居ま

したが、實に誤りました。

 他力を知つて御座る御方は、貴僧(あなた)で

御座りましたか、此(この)私は未だ解(さと)り

ませぬ、貴僧に遇(あ)ふたのが幸ひ、何卒

(なにとぞ)他力と云ふことを、一言お知らせを

願ひます 」 と尋ねられた。

 院主はビツクリ仰天し、一時に眞赤(まっか)な

顔と變(かわ)り、己(おの)れ忘れて佛照寺の

下座へ下り、頭を疊(たたみ)にすりつけ、

 「 甚(はなは)だ恐れ入りました。 私は間違ひで

ありました、識(し)らず知らず我れこそ他力を

知つて居るやうに、買ひ被つて居(を)りました、

どうぞお許し下さいませ、只今こそ始めて他力を

知らせて頂きました 」と、

心から懺悔(ざんげ)せられた。

 後(のち)に至つて同行に語つて云ふには

「 私も彼時(あのとき)は顔のやり場がなかつた、

隠れられるものなら地(ぢ)の底へでも潜り込み

たかつた 」 と、一生の間 懺悔せられたとある。



  信者めぐり 美濃 佛照寺 老師

金言金行集
2021年7月16日
 ● 嬉し相に稱名

 或時(あるとき)一人の同行が 「與市さんお寺参

りもなかなか苦しいもので殊(こと)に佛様を信じ

様(よう)と思ひ眞劍(しんけん)になればなる程

いよいよ六ヶ敷いものですな」 と話しかけられた

與市は 

 「 佛様から信じて貰ふて居れば何んの心配も

苦労もなくホンに樂なものです 」 と

嬉し相に稱名して居られた、


   與市同行 喜びのあと より

妙好人 椋田 與(与)市むくだ よいちさん
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