金言金行集 |
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2020年9月5日 |
ある年の秋の彼岸に、長崎県の住職が説教 にきた。 名説教家であり、野心家であった。 客僧は説教すませて汗をぬぐうていると、仁平が あいさつをして 「お客僧さま。 あの田楽はうまいものですなあ」 「田楽。 とうふで こさえた」 「はい、さようです」 「あれならうまい、わしも好きでのう」 「ところで、うまいけれど竹のくしがあって、あの ままじゃたべられませんなあ」 「はつはつ、それはそうだ」 「ところで、今日のあなたの説教が田楽のようで、 金らんのけさとか、講師とか、高座とかいう くしが ささっていては、そばへも よりつけないが、 こうしてけさもぬいで丸裸になって見りや。 如来様のおじひは、何としたありがたい ことかのう」 「ふん、ありがたい」と客僧は鼻であしろうた。 と仁平は全身の力をこめて客僧の肩をたたいて 「ふん ありがたいじゃない。 本当にありがたいじやないか」 と大喝(だいかつ)した。 客僧はちぢみ上った。そしてさんげし、急電で 夫人をよんだ。 何事かと かけつけた夫人は説教中の夫を見た。 夫は妻を高座の下に座らせ(本文は産らせ) 「皆さんこれは家内です。指に光っているユビワ、 美しいきもの(本文は きの)を見て下さい、 門徒に育てられながら、恩も思わず、ぜいたく 三昧の私夫婦は、仏祖をくいものにする鬼でした。 これからは気をつけて聞き、報謝させて頂だきま す」 とさんげした。 満座はどよめいた。 夫人は顔を赤くしてうつむいて、腹を立ててい たが、皈って後は、大切に法をきく人になった。 豊前(ぶぜん・福岡・大分県)の同行 阿部 仁平さん 信者群像より |
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金言金行集 |
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2020年9月8日 |
仁平は、臨終のとき見舞に行った住職に 「右の耳には、山や田畑をどうするかと地獄の 声がきこえますが、左の耳には、 お浄土の音楽がひびきます」 といった。 妙好人 阿部 仁平さん |
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