日本妙好人協会

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金言金行集
2020年10月9日
 吉平は横槌(よこずち)同行といわれた。

あるとき納屋に横槌(わらづち)がころがっている

のを、手でたたいて

「おいおい、横槌 お前はどこからきて、

どこにいくのか。

お前はここで何をするつもりか」

「いや、わしもお前と同じことじゃ。

お前の兄弟分じゃ。

ああ横槌 横槌、わしもお前と同じゃ」

吉平は、槌(つち)に自分を見て泣いた。

槌が自分であり、

自分が槌である、そしてそれをしらせるものは、

仏智であった。

あるとき、吉平の家が盗難に会うた。田川の

同行仁三郎がそれをきいて、通りかかりに家の

中をのぞきこんで、吉平にいった。

「きけばどうやらこのごろ、よいことを

したそうなのう」

「うん、借銭(しゃくせん)ばらい、借銭ばらい」

そういって吉平はにっこり笑った。

仁三郎も笑った。

禅問答そっくりであるが、このとほうもない

あいさつの中に、念仏者だけがもつ、自由と

微笑と同乳の兄弟のよしみがある。


九州の信者  妙好人 福井 吉平さん

信者群像より


金言金行集
2020年10月12日
  

   九州の信者  田川 仁三郎さんの歌

    極楽に行くか 行かぬか わしゃしらぬ

 わしの受け持ちや なむあだぶつ




     藤並天香 著  信者群像より



 


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